日本代表には遠藤保仁が必要なのか? [スポーツ]
負けたわけではないが、シンガポールにホームで引き分け。試合後には一斉にブーイングが起こり、さまざまな書き手がそれぞれの視点から不甲斐ないチーム や選手を批判した。読んでみると視点はもちろん試合で起きた現象の認識までバラバラなのだが、共通するのは内容と結果の双方に満足していないということ だ。
もちろん、予選最初の試合が簡単であるはずがない。終わってみたら大差が付いたような試合ですら、その入りはとてもジリジリした展開になるものだ。そも そも、シンガポールは何の苦労もなく大勝できるような相手でもない。それでも直近3試合の試合が脳内にこびりついていて、快勝を期待する自分がいたことも 否定できない。
シンガポール代表の粘り強さは確かにあったし、GKのイズワン・マフブトのプレーは文句なく素晴らしかった。また守備の統率が90分にわたって切れるこ となく、人数が限られていた攻撃も日本の攻勢を削ぐ効果は出ていた。総じて相手の守備はタイトだった。だが、日本代表にとってこの試合が難しくなった最大 の理由は、「攻守の切り替わり」というものがほとんど起こらなかったことにある。
■起きなかった攻守の切り替え
日本の攻撃が終わればシンガポールの攻撃が始まり、シンガポールの攻撃が終われば日本の攻撃が始まる。そういう意味では攻撃と守備は交互に変わるわけだ が、シンガポールが攻撃時にも守備のバランスを維持し、リスクを最小限にしたことで、日本がマイボールにした時点で攻めの起点にできる明らかなスペースは ないに等しく、常にビルドアップをやり直す形での攻撃を強いられた。
引いた相手を崩すのは難しいとよく言うが、どれだけ守備から入るチームでも、攻撃に転じれば多少なりバランスが変わるので、ボールを失った瞬間には背後 のリスクが生じるもの。それを素早く修正して守るのがネガティブ・トランジション(守備への切り替え)というものだが、シンガポールはトランジションその ものが存在しないに等しい戦い方を展開してきた。
こうなると日本代表はハリルホジッチ監督が就任してから掲げていたディフェンスラインの背後を積極的に狙う攻撃というものができなくなる。その中で序盤 は練習の通りにクサビからリターン、ワンツーで入っていく仕掛けにトライしていたが、見事に決まったのは前半30分に岡崎慎司がフリーでラストパスを受け たシーンくらいのもの。あとはDFのどこかで引っかかるか、受け手と出し手の呼吸が合わずに終わった。
そうした状況でも左MFの宇佐美貴史がサイドを強引に突破してマイナスクロスを上げたり、右SBの酒井宏樹が本田圭佑を追い越してクロスにつなげたり、 柴崎岳が技巧的なターンから宇佐美貴史にスルーパスを出したり、長谷部誠がちょっとした隙を突いてドリブルでバイタルまで侵入したりと、局面の仕掛けやア イディアでチャンスを作るシーンは確かに多かった。またハリルホジッチ監督が悔やむとおり、前半38分に太田宏介のCKに槙野智章が合わせたヘッドが決 まっていれば、何事もなく勝利できた試合だったのかもしれない。
ただ、日本がほとんどボールを持って攻めているのだから、相手の守備がそろっている状況だろうと局面の頑張り次第でチャンスは生まれるものだ。そのどれ かを決めたか決めないかという話にはなるわけだが、こうしてスコアレスに終わってみると、もっとチームとして計画に引いた相手を崩しにかかれなかったのか という疑問も浮き彫りになってくる。
■引いた相手をパスで崩すということ
局面で狭いところを強引に破る、サイドを突いてクロスを上げるだけでなく、相手の守備を揺さぶり、動かしてギャップを狙っていく崩し方だ。シンガポール がどれだけ引いて守っていても、日本がボールを動かせば相手の守備も動かざるを得ない。[4-1-4-1]というシステムで68メートルの横幅を守る以 上、中央を固めていても守備は動くのだ。そしてボールを奪おうとアプローチすれば、背後にはスペースが生じる。味方がそのスペースを埋めようとすれば、今 度はその脇にギャップが生まれる。
ハリルホジッチ監督は素早いパス回しの中でも3人目の動きを入れ、動いた選手が空けたスペースに別の選手が入っていく練習を繰り返しやってきた。ただ、 ボールを常に持った状況で、緩急を織り交ぜて相手の守備にギャップを生み出す意図を持った練習については、少なくとも公開された練習では取り入れていな い。11対11のハーフコートマッチも攻守の切り替わりが素早く繰り返されるものであって、たとえばサブ組が常に引いた状態になり、それを崩しにかかるよ うな想定では行われていなかった。
世界大会での躍進を目指していくためにハードワーク、球際の強さ、攻守の切り替え、ディフェンスラインの裏を狙う意識といったものは非常に重要で、その 部分で着実に代表合宿やメッセージの効果が出てきていることに疑いの余地はない。しかし、それらが多少向上したところで、引いた相手を崩すというアジア的 な課題の解決にはならない。
このスタイルの中でプレーの精度を上げる、共通意識を高めるなど、方向性を突き詰めることが間違っているとは言わないが、より有効なのは相手なりの戦術 を選択していくということだ。攻撃に緩急や揺さぶりを入れていくこと。ただ、その実践のために不足しているのは練習だけではない。
つまり、選手が足りない。
■Jリーグに眠る選択肢
渋滞した道路を交通整理するようなプレーメーカーがいないのだ。その有力候補は遠藤保仁であり、あるいは中村憲剛になるのだろうが、遠藤に関しては3月のメンバー発表の時に名指しでこれまでの実績をねぎらいながら、こう説明している。
「ものすごく大事な試合で遠藤が必要なときがあれば呼ぶということも考えている。多くの経験を持っているし、仲間に対する信頼が強いことも知っている。彼は自分の役割を知っている。ただ、より若い選手を今回選んだ。遠藤をどうするかというのはこれから見ていきたい」
実際の年齢だけでなく、ハリルホジッチ監督が掲げるスタイルを徹底して植え付ける意味で、自分のリズムを持つ遠藤がある種の“異物”になりうることは指 揮官も過去の映像などを見て察しているだろう。どれだけコンディションが良好でも、攻守でのハードワークを貫徹するスタイルに遠藤をフィットさせることは 難しい。しかし、対戦相手に応じたバリエーションを想定するならば、シンガポール戦のような展開が予想される場合の有効なオプションにしていく手はある。
中村憲剛もハードワークより研ぎ澄まされたビジョンで的確なポジションを取っていくタイプで、やはり“異物”になる存在だが、所属クラブで常に引いた相 手を崩すための創意工夫を突き詰めている選手。その点で言えば、ディテールにこだわるハリルホジッチ監督の哲学からは外れない。本来こういう選手たちはあ る程度チームのベースができてきて、さらにバリエーションを増やす段階で加えるか加えないかを判断したいところだろうが、予選突破への有効な選択であるな らば、彼らを早期に招集して把握しておくこともありではないか。
もちろん、現在のチームでも柴崎岳というプレーメーカーがそうした引き出しを担えれば基本スタイルを突き詰める中でも、対戦相手に応じた幅広い戦い方ができるはず。ただ、彼にすべてを背負わせるには重すぎる課題でもある。
日本代表は期待の反動もあって多くの批判にさらされるもの。ハリルホジッチ監督はそうした評価の浮き沈みに屈しないタイプだが、日本代表浮沈のカギは今後の選手選考にかかっていると言っても過言ではない。
遠藤や中村の名前を出したのはあくまで一例で、他にもドリブルで変化を出せる関根貴大や、トップ下の位置からオフ・ザ・ボールで違いを作れる武藤雄樹な ど、Jリーグには多くの可能性が眠っている。国内組で臨む8月の東アジアカップは、アジア予選突破という意味でも大きなポイントとなる。
ドイツサッカー 香川真司 [スポーツ]
ドイツはちょっとした「カガワ・フィーバー」に沸いていた。
ドルトムント対フライブルク戦の当日(9月13日)の『ビルト』紙は、笑顔を浮かべる香川真司とユルゲン・クロップ監督の写真とともに「カガワが帰ってきた」と見出しを打ち、「更衣室のロッカーも以前と同じ場所。現在はホテル暮らしだが、10月から新居に移る予定」と、周辺取材もしっかり進めて記事にしていた。
11日付の『キッカー』誌は、「ロイス欠場をカガワが助ける」とし、3年ぶりに復帰した日本代表MFが、負傷離脱したエース、マルコ・ロイスの穴を埋めるだろうと展望した。
そんな論調に呼応するかのように、試合前のアップ時にはゴール裏の南側スタンドから「カーガワ、シンジー」のチャントが湧き起こる。熱烈に復帰を歓迎する大音量の掛け声に、手を振って応える香川。復帰戦として最高の舞台が、本拠地ジグナル・イドゥナ・パルクに用意された。
サポーターとメディアの視線を一身に浴びながら、ピッチの香川がいきなり水を得た魚のように躍動する。開始1分、左サイドでパスを受けて展開すると、そこから積極的にボールに絡んでいく。狭い局面でもアウトサイド、インサイドを巧みに使い分けて打開を図り、クロスボールに合わせて果敢にエリア内に進入し、ゴールを狙った。
「トップ下に入ったので、前線で流動的に動きながら顔を出していこうと思っていた」と言う香川は、2年間のブランクをほとんど感じさせなかった。完璧なハーモニーを奏でたとは言えないまでも、周囲との連係はしっかり取れていた。
ところが、「相手が11人で守ってスペースがなかったので、厳しいなと思いながらプレーしていました」(香川)というように、なかなか決定的なチャンスがつかめず、もどかしい時間が続く。そんな閉塞感を打破したのは、やはり香川だった。
34分。中盤左サイドで敵を背負いながら縦パスを受けた香川は、切り返しで敵の間合いを外し、スルーパスを送る。「ケビン(グロスクロイツ)がうまく裏に抜け出したので、自分も良いタイミングで出せた」というそのパスは、左サイドを突っ走るケビン・グロスクロイツへ通り、グロスクロイツが折り返す。そのクロスに合わせたのはアドリアン・ラモス。新加入のFWが先制のネットを揺らした。
「あれだけ敵に引かれると、攻撃のリズムを作ることができない。それだけに、いい形で先制点を取れたのがすごく大きかった」(香川)という値千金の先制点で、ドルトムントは勢いに乗った。
そして41分だ。香川に待望のゴールが生まれる。
右サイドからのクロスに反応し、ヘンリク・ムヒタリアンとともに香川はエリア内へ。前方のムヒタリアンがスルーしたところを、GKの位置を確認して冷静に右足でネットに沈めたのだ。
ファーサイドに詰めていた香川は、ムヒタリアンに「スルーしろ」と叫んだそうだが、「たぶんムヒタリアンはシュートを狙っていた(笑)。自分の念が通じたのかな」と、嬉しそうにゴールシーンを振り返った。
昨シーズンのマンチェスター・ユナイテッドでは、香川はノーゴールに終わった。ホーム最終戦では、「(ゴールという)結果をつかめなかったので、すごく難しい、辛いシーズンだった」と失意の1年に唇を噛んだ。しかし、心機一転して決意したドルトムント復帰、その再デビュー戦をみずからのゴールで飾ってみせたのだ。
右足の太もも裏が攣って途中交代し、「緊張なのか、コンディションからなのかは分からないが、身体がちょっと重かった。身体が動いてきたところで足にきた。もっとフィットネスをあげないと」とコンディションの課題を口にしたものの、1ゴールを奪い、もう1点に絡む活躍だ。ほぼ文句なしの再デビュー戦だったはずだ。
田中将大 里田まい ブログ [スポーツ]
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(土)
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東北楽天
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読売
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[勝]内海
[敗]則本
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